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仁義なき焼き鳥対決     美唄VS室蘭

北海道のB級グルメ界では今、ホットな戦いが展開されています。その一つに焼き鳥があります。

B級グルメと言えば、ご当地ラーメンや、大阪と広島の仁義なきお好み焼対決とか、名古屋と大阪の牛筋ドテ焼き対決、さらには、どこだか忘れましたがソース焼きそば対決等を連想しますが、北海道では今、焼き鳥なんです。

先ずは、道央の美唄市の焼き鳥です。  かつて炭坑街として栄えた美唄市ですが、基幹産業であった石炭産業が途絶えて久しく、平成13年に、旧産炭地特別措置法がその期限を迎えて以降、街は急速に衰退して行きました。しかし、そのような状況の中、美唄の街が再び注目を集めたのは、「美唄焼き鳥」でした。

三重県桑名出身の中村豊次郎と言う資産家が集団を率いて美唄に入植したのは明治45年。しかし、街のど真ん中を流れる石狩川の氾濫に幾度も悩まされ、小作人達は疲弊して行きました。そんなとき、中村は、内地から取り寄せた鶏を、小作人一戸につき雄雌一羽ずつ貸与し、代償として翌年生まれる一番雛のうち、雄一羽・雌二羽を納めさせました。これを繰り返していけば農家ほぼ全戸に鶏が行き渡ると考えたのです。こうして得た卵や鶏肉は貧苦にあえぐ農民の滋養のもとになり、貴重な収入源となったのです。

以来、美唄の人々の間では、特別な日に、鶏飯や焼き鳥を作って祝うと言う風習が定着しました。

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これが、美唄の焼き鳥です。 美唄焼き鳥の特色は、一本の串に、鶏のパーツ・・・精肉、皮、肝、腸、内玉等が全て刺さっていることです。その串を炭火で一気に焼いて、塩を振りかけて供されます。胡椒等は一切振りません。
本来、美唄焼き鳥の素材は、いわゆる老廃鶏。 つまり卵を産まなくなった鶏です。でも、丁寧に下ごしらえをすることによって、老廃鶏特有の固さや臭いは無く、むしろ一般に売られている銘柄鶏よりも、コクと歯ごたえがあって、とても美味しいのです。一本80円前後で客に出される焼き鳥は、今では街の名物になっており、札幌市内にも、美唄方式の焼き鳥を出す店が増えています。 しかし、最近は、若いブロイラーを使う店も増えて、本当の美唄焼き鳥を見分けることが難しくなっています。 やはり本物の美唄焼き鳥を堪能するには、美唄の街へ行かなければなりませんね。


さて、次は室蘭焼き鳥です。 実は室蘭の焼き鳥は、「焼き鳥」ではなく「焼き豚」なのです。豚のバラ肉の比較的赤身が多い部分をぶつ切りにして、タマネギと交互に串に刺して炭火でじっくりと焼き、醤油味の甘ダレを絡めて、洋芥子を添えて供されます。

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これが、室蘭の「焼き鳥」です。 強火の遠火でじっくり焼かれた豚バラ肉は、ふっくらとしていてジューシーで、甘い醤油ダレに包まれた串に洋芥子を付けて口に運ぶと、「なんだ コレは!」と驚嘆するくらい旨いのです。

ところで、何故 室蘭の「焼き鳥」だけが豚肉なのでしょうか?   鉄の街である室蘭の歴史は、この地に溶鉱炉が置かれた明治時代〜大正時代にさかのぼります。当時、室蘭には、日本初の近代的な製鉄所として作られた北九州の官営八幡製鉄所から、技術指導の為に大勢の技術者がやってきました。室蘭に定着した北九州出身の方々は、豚肉を好んで食べたそうです。 一方で、伊達、室蘭、苫小牧、日高の太平洋側の比較的温暖なこの地域では、専ら軍靴の製造に必要な豚皮を生産する為に養豚が盛んに行われており、その副産物だった豚肉が豊富にあったと言う背景もあるようです。

北海道の太平洋側で最も栄えた街 室蘭では、飲食店の上客は専ら製鉄所関係者でした。その客の嗜好と、この地域で産する大量の豚肉が、室蘭焼き鳥の原型を作ったのではないかと言われています。

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ところで、上の画像は豚足の煮込みです。実はこれも室蘭の隠れた名物なのです。これは、大変に手間のかかる仕事なのです。 豚足の毛を丁寧に抜いてから茹で上げて水に晒し、さらに醤油味のタレの中で 超弱火でコトコト一晩煮込むのです。 出来上がったそれは、身が崩れる寸前のトロトロ状態。 やはり洋芥子を付けていただきます。 室蘭の食文化は、何やら大陸の匂いがします。 


美唄と室蘭の焼き鳥は、それぞれ地元の郵便局が地方送りを競っています。でも、やっぱり、地元で食べる焼き鳥は格別なのです。
by marimuramario | 2009-06-04 17:35 | B級グルメ
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