札幌ラーメン

北海道の食を語る上で、札幌ラーメンは、やはり避けては通れない食べ物です。

さて、札幌ラーメンのルーツを辿って行くと大正時代に開店した一軒の食堂に辿り着きます。

大正11年。北海道帝國大学(現北海道大学)正門前に1軒の食堂が開店しました。このお店が後に札幌ラーメンのルーツとなる竹家食堂です。創業者の大久昌治さんは当初、単なる食堂のつもりで始めましたが、当時北大には、何百人という、現在の十数倍にものぼる中国本土や台湾からの留学生がいました。当時、全国の旧帝国大学には、政策的に大陸の優秀な子弟が集められていたのです。

そこで、竹家は、中国からの留学生の要望に応えるべく、小樽の料理屋で働いていた山東省出身の料理人、王文彩を迎え入れ、留学生相手に中国料理を出し始めました。中でもこの王文彩が作り出した 茹でた豚のもも肉とネギを細切りにして上にのせた塩味の肉絲湯麺というメニューが、留学生をはじめとして北海道大学の教官や学生に大変好評で、これが札幌ラーメンのルーツとなったのです。そしてその後、醤油味が加えられ、具に焼豚、メンマ、ネギが入るようになり、現在の札幌ラーメンの原型となったのです。竹家の成功を見て、続々とラーメンを出す店が出てきました。札幌の第一次ラーメンブームです。
しかし、太平洋戦争の開戦と共に、これらの店は姿を消しました。

 戦後、二条市場の近くに一軒のラーメン屋台が開店しました。「だるま軒」と言う屋台の創業者は、製麺の技術を持っており、その後続々と出店した屋台に麺を卸し、戦後の札幌ラーメンの礎となりました。

その後、昭和46年、すすきのにラーメン横町が出来て、この頃から札幌ラーメンは全国に知られるようになりました。また、そのころ三平と言う食堂で、日本初の味噌ラーメンが発売され、瞬く間に札幌のラーメン店に広がりました。 この時代のラーメン、つまり第2世代の札幌ラーメンに関しては、後日改めてUPしたいと思います。

さて、現在の札幌ラーメン業界は熾烈な競争を繰り広げています。一口に札幌ラーメンと言っても、現在の札幌ラーメンの味は多様で、多くの店が独自の味を競っている訳です。 そこで 私は、今の札幌ラーメンを大きく二つに分けています。先ずは「御馳走のラーメン」、そして「飽きないラーメン」です。
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「御馳走のラーメン」の先駆けは、上の写真。「ラーメンの駅」と言う店です。元々専業主婦だった創業者が、それまでの札幌ラーメンに飽き足らず、ラーメン作りの基本を独学で習得した上で独自の創意工夫をこらしたラーメンです。鶏ガラと豚骨とタマネギ等の野菜で取ったスープに熱々のラードを加えて出されるラーメンは、非常に濃厚で、それまでの札幌ラーメンとは一線を画す味でした。全国のラヲタ、つまりラーメン愛好家からは「神」と崇められている店主です。
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次も知る人ぞ知るラーメンの名店「純連」と「すみれ」のラーメンです。 実は、この二つの店の主人は兄弟で、しかも前述の「ラーメンの駅」創業者の息子さんです。 母親の味を引き継ぎつつ、独自の工夫を加えて札幌を代表するラーメン店に成長しました。 この3店舗の味は、市内でしのぎを削る多くの店の原点です。

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「御馳走のラーメン」の最後は、「ラーメンてつや」です。上の写真がそれです。 味は純連やすみれ同様ラードたっぷりのこってり系ですが、前述の2店との違いは、豚の背脂を加えて仕上げる事です。背脂とは豚ロースの脂身を細かく切ってお湯に入れて脂を抽出したもので、スープにコクと旨味を加えます。 比較的新しいチェーン店ですが非常にファンの多い店です。
ところで、何故私がこれらのラーメンを「御馳走のラーメン」と呼ぶのかという理由ですが、第3世代のラーメンの味は多様で、非常に濃厚で脂が多いと言うのが特徴です。手間ひまかけている分値段も高く、一杯800円〜900円程度です。確かに美味いのです。美味いのですが、さすがに毎日食べる事は出来ません。時々思い出しては、食べに行くようなラーメンです。

さて次は「飽きないラーメン」です。この系統のラーメンは、戦後の屋台から始まる第2世代の札幌ラーメンの味を受け継いだラーメンで、どちらかと言うと個人経営の古い食堂のラーメンに、その味が受け継がれてきました。 このラーメンの基本は塩味で、鶏ガラと豚骨と大量のタマネギを入れて煮出す少々灰色がかった色のスープが特徴です。大学進学の為に札幌に渡った私が、最初に食べたラーメンがこのタイプです。麺は中太縮れ麺の固茹でで、ラードの量は、そんなに多くありません。

そんな第2世代のラーメンを愛し、脱サラして開業した人物が居ます。今や日本全国を始め中国や香港、台湾にも進出を果たした「ラーメンさんぱち」の社長です。 彼は、典型的な第2世代のラーメンの味を守りつつ、それを武器にチェーン展開を果たしました。  ある時、私のクライアントでもあるその社長から「うちのラーメン。どうだべ?」と聞かれた時、私は、「特徴が無いのが特徴ですかね・・・」と、つい本音を言ってしまった後に慌てて「毎日食べても飽きない料理が、本当に美味しいものではないでしょうか。だから さんぱちラーメンは、毎日食べても飽きません」と言葉を継ぎ足しました(笑
「そうか、そうかも知れないな・・・」と社長。 でも、昨年の春から今年の春までの約1年間、さんぱちラーメンを中心に約300杯のラーメンを食べた私が言うのですから説得力があったようです。
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写真は、「ラーメンさんぱち」のラーメンです。向かって左側が「飽きない」塩ラーメン。右側は・・・・「飽きないラーメン」のメガサイズ(味噌味)です。 いくら「飽きない」と言っても普通盛りの3倍とあっては、さすがに飽きます(笑   さんぱちのラーメンは、札幌ラーメンの中でも比較的あっさりしています。注文してからラーメンが運ばれてくるまで平均的に3分程度。しかも他店に比べて値段が安いのです。 社長曰く「ラーメンは大衆の食べ物だから 、安くなきゃだめだよな!」 その通りです。因に国内外にある72店舗で、一日に1万5千杯を売り上げていると言うのですから驚きです。

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昨年の7月にopenした、「ラーメンさんぱち」のフッラッグシップです。恐らく日本最大のラーメン店舗です。・・・ってことは、世界最大?    実はこの店舗、私の設計です。
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店舗の内部です。天井にぶら下がっているのは「割り箸」のオブジェです。 この店のコンセプトは、フィンランドでラーメン屋を開店したいと思い立った現地のオーナーが、フィンランドの建築家にラーメン店のインテリアデザインを依頼したらどうなるか? ・・・・です(笑 さんぱちの社長のラッキーカラーは白。ですから店内は真っ白にしました。  縦横3列に並んだ照明器具は、実は中華鍋で出来ています。 これ,曼荼羅をデフォルメしています。

ラーメン屋にしてはおしゃれなインテリアと評判を呼び、若い女性客が増えました。
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店内に掲示している、「ラーメンさんぱち」のコンセプトボードです。日本語の説明と共に、英語、中国語、ハングルで書かれています。 因に翻訳は、当社超優秀社員のnaccoと その友人の方々に担当していただきました。
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by marimuramario | 2009-06-11 19:25 | B級グルメ
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